◆発表のポイント
- カーボンナノチューブと六方晶窒化ホウ素のヘテロ構造の大規模集合化に成功しました。
- 電気特性に脳のシナプスのようなメモリスティブな振る舞いを発見しました。
- メモリスティブな電気特性の発現メカニズムのモデルを提唱しました。
岡山大学大学院自然科学研究科(工)の博士前期課程1年の岸淵美咲大学院生と同大学術研究院自然科学学域の鈴木弘朗助教、林靖彦教授らの研究グループは、カーボンナノチューブ(CNT)に六方晶窒化ホウ素(hBN)を合成した新規材料(一次元hBN/CNTヘテロ構造)の大規模集合化(バルクスケール化)に成功し、その新規材料において脳のシナプスのようなメモリスティブな振る舞いを発見しました。
今回の研究成果は、2021年7月30日に米国化学会(American Chemical Society)発行の学術雑誌「 ACS Applied Electronic Materials 」に掲載されました。
メモリスタは、素子を通過した電荷の情報を抵抗変化として記憶する受動素子であり、脳のシナプスを模擬したような動作が可能であると考えられています。そのため、人間の脳と同じ思考回路を持つニューロモルフィック(神経形態学的)コンピューティングに向けて必要不可欠です。今回メモリスタ動作を明らかにした材料はワイヤー状で曲げられることから、フレキシブルデバイスへの実装が期待できます。フレキシブルなメモリスタ素子は、今後AIやIoEの発展に大きく寄与します。
◆研究者からのひとこと
学部4年から卒論テーマとしても取り組んだ研究です。コロナ禍で研究する時間が限られていましたが、研究室メンバーに支えて頂きました。有難うございました!(岸淵) | ![]() 岸淵大学院生 |
![]() 鈴木助教 | 岡山大学に2020年度に着任して新たに取り組んだ研究です。研究室の高いCNT合成技術に最新の知見を取り入れた結果、非常に興味深い現象を発見することができました。(鈴木) |
■論文情報
論 文 名:Memristive Behavior in One-Dimensional Hexagonal Boron Nitride Carbon Nanotube Heterostructure Assembliesl
掲 載 紙: ACS Applied Electronic Materials
著 者:Hiroo Suzuki, Misaki Kishibuchi, Kazuma Shimogami, Mitsuaki Maetani, Kyohei Nasu, Tomohiro Nakagawa, Yuichiro Tanaka, Yasuhiko Hayashi
D O I:10.1021/acsaelm.1c00472
U R L: Memristive Behavior in One-Dimensional Hexagonal Boron Nitride/Carbon Nanotube Heterostructure Assemblies
<詳しい研究内容について>
メモリスティブな振る舞いを持つ新規材料を発見~人間と同様の思考を持つコンピュータの実現に向けて~
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院 自然科学学域 助教 鈴木 弘朗
(電話番号)086-251-8133 (FAX)086-251-8133