C型肝炎ウイルスの感染を認識する新しい分子機構を解明
2013年06月21日
本学大学院医歯薬学総合研究科腫瘍ウイルス学分野の團迫浩方助教、加藤宣之教授らと米国ノースカロライナ大学の山根大典研究員、Stanley M Lemon教授らの共同研究グループは、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染認識に関わる新しい宿主因子を突き止め、その分子機構を明らかにしました。本研究成果は2013年5月23日(米国東部時間)、米国のオンライン感染症専門誌『PLoS Pathogens』に掲載されました。
本研究成果により同定された宿主因子は培養細胞内の自然免疫応答に関与しており、C型慢性肝炎患者でもその発現調節を人為的に行うことができれば、生体内のHCV量を大幅に減少させることが期待されます。
<業 績>本研究成果により同定された宿主因子は培養細胞内の自然免疫応答に関与しており、C型慢性肝炎患者でもその発現調節を人為的に行うことができれば、生体内のHCV量を大幅に減少させることが期待されます。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科腫瘍ウイルス学分野の團迫浩方助教、加藤宣之教授らと米国ノースカロライナ大学医学部感染症部門の山根大典研究員、Stanley M Lemon教授らの研究グループは、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染認識機構の全容解明に取り組み、感染細胞内でHCVが複製することにより生じる二本鎖RNAを「非自己」として認識する宿主因子を新たに同定しました。
今回同定した宿主因子は、クラスAスカベンジャー受容体と呼ばれるもので、この因子はHCV感染細胞由来の二本鎖RNAを細胞外で認識し、その下流の抗ウイルス機構を活性化することに関与していました。また、この因子を介して、HCV感染細胞から非感染細胞に抗ウイルスシグナルが情報伝達されていることも世界で初めて明らかにしました(図1)。
<見込まれる成果>
今回の研究成果により、C型慢性肝炎患者の肝臓内におけるクラスAスカベンジャー受容体の発現量により、HCV 量が調節されている可能性があることが分かりました。今後、クラスAスカベンジャー受容体の発現調節を人為的に行うことが可能となれば、体内の自然免疫応答を高め、HCV量を大幅に減少させることができるものと期待されます。

図1 クラスAスカベンジャー受容体を介したHCV感染認識機構
発表論文はこちらからご確認いただけます
発表論文:Dansako H, Yamane D, Welsch C, McGivern DR, Hu F, Kato N, Lemon SM. Class A Scavenger Receptor 1 (MSR1) Restricts Hepatitis C Virus Replication by Mediating Toll-like Receptor 3 Recognition of Viral RNAs Produced in Neighboring Cells. PLoS Pathog, 2013, 9(5), e1003345.(doi: 10.1371/journal.ppat.1003345)
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岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科
腫瘍ウイルス学分野
(氏名)助教 團迫 浩方
教授 加藤 宣之
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