◆発表のポイント
- カフェインはドーパミンを活性化させる作用があり、ヒトの気分を高揚させる働きがあることはよく知られています。昆虫でもカフェインがハエを活性化させ睡眠に影響することや、ハチの学習記憶能力を向上させ延命効果もあることが知られていますが、カフェインが殺虫や害虫防除に効果を持つかは、古くより実験があるものの、実験によって結果がまちまちでした。
- 今回、私たちはカフェインを砂糖水にまぜてヒロズキンバエの成虫に与えることで、ハエの寿命が著しく減少することを発見しました。
- 寿命短縮の程度は飲ませるカフェインの量により、通常30日程度の平均寿命が、0.5パーセントより濃い量のカフェインを飲ませると7日以内でほぼ死滅し、寿命に対する強い負の効果が判明しました。これまでコーヒーの抽出液の散布などを用いたカフェインによる害虫の殺虫効果についてははっきりしませんでしたが、使い方次第では実用的な殺虫効果が期待できます。
岡山大学大学院環境生命自然科学研究科博士後期課程2年(国費留学生)のShine Shane Naing大学院生(ミャンマー)と岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域の宮竹貴久教授らは、ヒロズキンバエ(ハエ目)を材料として、カフェインを砂糖水に混ぜて飲ませ、寿命・活動量・脂質の変化などへの影響を調べました。実験の結果、0.5パーセント以上のカフェインを含んだ砂糖水を飲ませると7日以内で死滅することがわかり、使い方次第では実用的な殺虫効果が期待できます。カフェインはミツバチの記憶精度をあげる効果があることがわかっていましたが、殺虫効果については曖昧でした。またカフェインの過剰摂取はヒトにも有害な影響のあることがわかっていますが、昆虫にも過剰摂取は致命的であることが明らかとなり、基礎と応用でさらなる研究が必要であることがわかりました。この研究成果は2月10日午前10時(日本時間)、Springerの日本応用動物昆虫学会誌「Applied Entomology and Zoology」にオンライン掲載されます。
◆研究者からひとこと
カフェインを甘い砂糖水に混ぜてハエに与えるとカフェインには殺虫効果のあることがわかりました。今回の研究成果はJICAと国費支援を受けミャンマーより来日した留学生が証明したもので、カフェインの使い方次第では国際的に殺虫剤としての実用化につながるかも知れません。カフェインが昆虫に及ぼす効果はまだ不明な点が多く、今後、さらなる研究が必要だと思います。 | ![]() |
■論文情報等
論文名:Effects of caffeine on the longevity and locomotion activity of the common green bottle fly, Lucilia sericata (Diptera: Calliphoridae)
邦題名「ヒロズキンバエの寿命と歩行活動量に及ぼすカフェインの影響」
掲載誌:Applied Entomology and Zoology (Springer)
著者:Shine Shane Naing, Haruna Fujioka, Teruhisa Matsuura, Takahisa Miyatake
DOI:10.1007/s13355-025-00893-0.
U R L:https://link.springer.com/article/10.1007/s13355-025-00893-0
■研究資金
本研究はJICA-国際協力機構(ミャンマー国 「農業セクター中核人材育成」)および、MEXT-文部科学省(国費外国人留学生〔特別枠〕)の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
カフェインの殺虫効果を実証~飲んだ昆虫は死ぬ~
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(農)
教授 宮竹 貴久
(電話番号)086-251-8339 (FAX番号)086-251-8388