国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

早生樹アカシアの網羅的発現遺伝子の解読と育種マーカー配列の同定〜5年で森をつくるマメ科樹木の網羅的発現遺伝子の解読と育種〜

2024年10月23日

◆発表のポイント

  • 次世代DNAシーケンサーを用いて早生樹アカシアの網羅的遺伝子解析を行いました。
  • 転写因子などゲノム編集に必要なターゲット塩基配列を高解像度に解読できました。
  • 耐病性、耐塩性など育種と新品種の選抜に必要とされるマーカー配列を同定しました。
  • カーボンニュートラルなバイオマス発電を目指した早生樹の分子育種技術を開発します。

 岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(農)の田村 隆教授と住友林業株式会社筑波研究所グループは、早生樹アカシア(Acacia crassicarpa)で発現している遺伝子の網羅的解析を実施しました。本研究成果は8月29日、スイスの植物科学専門誌「Frontiers in Plant Science」にOriginal Research Articleとして掲載されました。
 早生樹アカシアは、5年で森をつくるマメ科の樹木であり東南アジアやオーストラリアに自生する天然バイオマス資源です。発電燃料として用途開発が期待されていますが、カリウム含量が高く、燃焼によって強アルカリ性かつ粘着性の高い灰が生じるために、燃焼炉のベルトコンベアを破損させるなど、育種上の改善課題をいくつか抱えています。これまで樹木の育種は数世紀もかけて優良品種の出現を待ち、長い時間を掛けて選抜を重ねるほかありませんでした。本研究ではアカシアの培養細胞における発現遺伝子を網羅的に解読しました。塩基配列の解読に成功すればゲノム編集に必要なターゲット配列を設計できるので、短期間で樹木を品種改良できる可能性が芽生えてきます。
 今回、新たに解読された93,317個の遺伝子は、早生樹アカシアの分子育種を切り開く学術的基盤を提供します。また優良種を選抜するうえで個体を識別するためのマーカー配列をもつ転写因子遺伝子群も同定しました。この配列情報により分子レベルで優良品種を識別できることが期待されます。

◆研究者からひとこと

 春先の弱い日光でも旺盛に成長するレンゲのようにマメ科の植物は、窒素固定細菌と共生することにより、炭素固定の律速である窒素を大気から吸収しています。早生樹アカシアもマメ科の樹木です。驚異的な成長スピードの一因として、その樹木のどこかに窒素固定生物を隠し持っているのかも知れません。早生樹アカシアはプランテーションにおいて大規模に栽培されて産業利用されていますが、学術的には多くの謎が残されています。本研究で公開されたアカシアの遺伝子のカタログは、そのような秘密を解き明かす知的基盤を提供すると期待されます。
田村教授

■論文情報
論 文 名:Illumina-based transcriptomic analysis of the fast-growing leguminous tree Acacia crassicarpa: functional gene annotation and identification of novel SSR-markers
掲 載 紙:Frontiers in Plant Science
著  者:Ishio, S. Kusunoki, K., Nemoto, M., Kanao, T., Tamura, T.
D O I:10.3389/fpls.2024.1339958
U R L:https://www.frontiersin.org/journals/plant-science/articles/10.3389/fpls.2024.1339958/full

■研究資金
 本研究は、住友林業株式会社との共同研究および科学技術振興機構によるターゲット駆動型研究開発による適応可能かつシームレスな技術移転プログラム(A-STEP, JPMJTM20QX21445979)による支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
早生樹アカシアの網羅的発現遺伝子の解読と育種マーカー配列の同定〜5年で森をつくるマメ科樹木の網羅的発現遺伝子の解読と育種〜


<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院環境生命自然科学学域
教授 田村 隆
(電話番号)086-251-8293
(FAX)086-251-8388

年度