国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

免疫T細胞によるインターフェロンγを介した腫瘍血管正常化を発見!~メトホルミンと抗PD-1抗体併用は血管を正常化し抗がん活性を高める~

2024年07月30日

◆発表のポイント

  • メトホルミンと免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体)の併用は腫瘍血管を正常化します。
  • 腫瘍血管の正常化により、より多くの免疫CD8T細胞が腫瘍内に入ることができます。
  • 腫瘍血管正常化は活性化CD8T細胞の分泌するインターフェロンγに依存します。

 岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)免疫学の鵜殿平一郎教授、徳増美穂助教、西田充香子助教を中心とする金沢大学の内藤尚道教授、北海道大学の樋田京子教授のメンバーからなる研究チームは、糖尿病治療薬メトホルミンと 抗PD-1抗体の併用療法は腫瘍浸潤CD8T細胞(CD8TILs)を強力に活性化してインターフェロンγ(IFNγ)を産生し、IFNγが異常な腫瘍血管を正常化してCD8T細胞のさらなる腫瘍内流入を促進することを明らかにしました。
 固形がんと戦うCD8T細胞は腫瘍血管を跨いでがん組織内に入りますが、腫瘍血管は粗雑なためCD8T細胞の侵入をブロックしています。本研究は、メトホルミンと抗PD-1抗体の併用療法がCD8TILsを活性化し大量に分泌されたIFNγが異常な血管を正常血管に改変し、CD8T細胞の一層の腫瘍内流入を促すことを見出しました。腫瘍血管の正常化を促進する薬剤の開発は世界的な競争の中にありますが、メトホルミンと現行の免疫治療薬との併用で腫瘍血管を正常化し、抗腫瘍効果を改善できることが期待されます。
 この研究成果は7月17日、米国科学アカデミー紀要「Proceeding of the National Academy of Sciences USA」の電子版にて掲載されました。

◆研究者からひとこと

私達は免疫学、とりわけ腫瘍免疫を研究しています。これまでの研究は免疫細胞同士のネットワークの解明が主流でした。しかし昨今の腫瘍免疫研究から、腫瘍微小環境のあり方が固形がんの運命を決定する重要なファクターであることが明らかになり、がん組織の病理学的解析は避けて通れない時代に突入しています。免疫学者にとって免疫組織染色法を用いたがん組織の解析は苦手な部分でしたが、意を決してこの分野に飛び込みました。実験開始当初は自家蛍光を除くことが出来ず随分と苦労しました。また、腫瘍血管をどの様に解析出来るのか、専門家にご指導を仰ぎながら試行錯誤を繰り返してやっと今回の研究成果に繋がりました。ラボの総力を上げての仕事でしたので、今回の論文受理については喜びもまたひとしおです。みんなよく頑張ってくれました。
鵜殿教授

■論文情報
論 文 名:Metformin synergizes with PD-1 blockade to promote normalization of tumor vessels via CD8T cells and IFNγ
掲 載 紙:Proceeding of the National Academy of Sciences USA
著  者:Miho Tokumasu, Mikako Nishida, Weiyang Zhao, Ruoyu Chao, Natsumi Imano, Nahoko Yamashita, Kyoko Hida, Hisamichi Naito, Heiichiro Udono
D O I:10.1073/pnas.2404778121
U R L:https://www.pnas.org/

■研究資金
 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤A・18H04033, 挑戦的萌芽・17K19598, 基盤B・24K02326, 研究代表:鵜殿平一郎、基盤C・24K10334, 研究代表:西田充香子、スタートアップ研究・23K19540,研究代表:徳増美穂)、小野薬品工業株式会社の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
免疫T細胞によるインターフェロンγを介した腫瘍血管正常化を発見!~メトホルミンと抗PD-1抗体併用は血管を正常化し抗がん活性を高める~

<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医) 免疫学分野
教授 鵜殿 平一郎
(電話番号)086-235-7192
(FAX)086-235-7193



年度