国立大学法人 岡山大学

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初期地球内部の環境が酸素濃度によって制御されていたことが明らかに―地球の進化過程の解明へ―

2024年07月24日

◆発表のポイント

  • 高酸素濃度下で地球マントル岩石の高圧融解実験を行い、高酸素濃度における融解温度が従来の比較的低い酸素濃度の融解温度に比べて、有意に低いことが分かりました。
  • 極度に低酸素濃度の初期地球のマグマの海の海底温度は、従来の推定値よりも非常に高い可能性があることが分かりました。
  • 従来の初期地球~現地球への進化モデルは、酸素濃度の影響を考慮することで大きく描き換わる可能性があることが分かりました。

 岡山大学惑星物質研究所の石井貴之准教授、中華人民共和国北京高圧科学研究センターYanhao Lin 研究員、オランダアムステルダム自由大学、ドイツ連邦共和国バイロイト大学バイエルン地球科学研究所の研究グループからなる国際共同研究チームは、高酸素濃度下で地球マントル岩石の高圧融解実験を行い、高酸素濃度下における融解温度が従来の低酸素濃度における融解温度よりも有意に低いことを明らかにしました。この結果は、深さ1000 km以上に達していたと言われる初期地球におけるマグマの海の海底温度が従来の予想よりも高いことを示しており、初期地球の冷却過程と地球核形成モデルを見直す必要があることを示唆しています。この研究成果は7月16日(現地時間)、英国の地球科学雑誌「Nature Geoscience」にArticleとして掲載されました。
 初期地球内部は、マグマオーシャンというマグマの海で覆われていたと考えられています。マグマオーシャンがどのようにして固まり、現在の地球が形成されたかについてはよく分かっていません。本研究成果は、初期地球環境が当時の酸化還元状態に大きく左右されることを示しており、初期地球形成から現在の地球への進化過程を大きく見直す必要性を示唆しています。

◆研究者からひとこと

地球がどのようにして現在の地球へと進化してきたのかを解明することは、私たち生命の起源にもつながる地球科学における最重要テーマの一つです。しかし、現代に生きる私たちが約46億年前から始まった地球の歴史を知ることは容易ではありません。今回の成果は、そんな初期地球という未知の世界を知るうえで重要な要因の一つを発見したと思っています。
世界的に宇宙開発が進む中、地球深部の研究は逆を向いているように見えますが、地球を理解することで、宇宙をより良く理解することもできます。今後も“高圧”を用いて地球の全貌を解き明かしていきたいと思っています。

石井准教授

■論文情報
論 文 名:Melting at the base of a terrestrial magma ocean controlled by oxygen fugacity
掲 載 誌:Nature geoscience
著  者:Yanhao Lin, Takayuki Ishii, Wim van Westrenen, Tomoo Katsura, Ho-Kwang Mao
D O I:https://doi.org/10.1038/s41561-024-01495-1[New window]
U R L:https://www.nature.com/articles/s41561-024-01495-1[New window]

<詳しい研究内容について>
初期地球内部の環境が酸素濃度によって制御されていたことが明らかに―地球の進化過程の解明へ―[PDF]


<お問い合わせ>
岡山大学 惑星物質研究所
准教授 石井貴之
(電話番号)0858-43-3754
(FAX)0858-43-2184

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