国立大学法人 岡山大学

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繰り返す膀胱炎の原因は膣に定着した大腸菌が原因~腟をターゲットとした新規予防法の重要性~

2024年06月19日

◆発表のポイント

  • 反復性膀胱炎を発症した閉経後女性の尿中および膣内の大腸菌を解析し比較したところ、大腸菌の遺伝子と抗菌薬への感受性は、それぞれ患者ごとに同一であることを確認しました。
  • 反復性膀胱炎では、尿中だけでなく膣内の大腸菌を標的とした管理が不可欠であることが示唆されました。
  • 抗菌薬を用いない、新しい反復性膀胱炎の予防法・治療法としての「乳酸菌腟坐剤」の実用化に向け、引き続き研究を進めていきます。

岡山大学病院泌尿器科の関戸崇了医員・定平卓也助教(感染症グループ主任)、学術研究院医歯薬学域(医)の荒木元朗教授、群馬大学大学院医学系研究科細菌学講座の平川秀忠准教授の共同研究グループは、反復性膀胱炎を有する閉経後女性の尿中および膣内の大腸菌について、遺伝子型と抗菌薬への感受性が一致していることを突き止めました。これらの研究成果は5月31日、日本化学療法学会・日本感染症学会・日本環境感染学会の三学会の学術雑誌「Journal of Infection and Chemotherapy」に掲載されました。
  閉経後の女性では、ホルモンバランスの影響で腟内の乳酸菌が減少し細菌叢が変化すると、膀胱炎の原因となる大腸菌が腟から膀胱に移行し、腟内に大腸菌が定着し膀胱炎が治りにくくなるといわれています。今回、患者ごとの尿中と腟内の大腸菌を詳しく研究することで、尿中と腟内の大腸菌が、遺伝子や抗菌薬感受性の観点から同一であることを確認しました。反復性膀胱炎の適切な管理には、尿中だけでなく膣内に定着した大腸菌を標的とすることが重要であることが分かりました。近年、抗菌薬の使用による耐性菌(1)の出現が問題となっており、抗菌薬を用いない反復性膀胱炎の管理が求められています。岡山大学病院泌尿器科は以前より、新しい反復性膀胱炎の予防法・治療法として乳酸菌腟坐剤の研究を行っており、その実用化の必要性を改めて強調する研究結果でした。実用化に向け引き続き研究を進める予定です。

◆研究者からひとこと

なかなか治らない反復性膀胱炎では、腟内に留まる大腸菌が尿路と密接に関わり、膀胱炎を引き起こすと考えております。大腸菌に着目した今回の研究により、尿のみでなく腟を考慮した予防や治療が反復性膀胱炎では必要であると、改めて分かりました。以前より我々は、抗菌薬に頼らない新たな予防法として、乳酸菌腟坐剤の実用化を目指し研究しております。早く皆様のお役に立てるよう、これからも研究を続けていきます。
関戸 医員

定平 助教

■論文情報
論 文 名:Homology of Escherichia coli isolated from urine and vagina and their antimicrobial susceptibility in postmenopausal women with recurrent cystitis
邦 題 名「閉経後女性の反復性膀胱炎における尿中および膣内大腸菌の相同性と抗菌薬感受性」
掲 載 紙:Journal of Infection and Chemotherapy
著  者:Takanori Sekito, Takuya Sadahira, Hidetada Hirakawa, Ayano Ishii, Koichiro Wada, Motoo Araki
D O I:https://doi.org/10.1016/j.jiac.2024.05.015
U R L:https://www.jiac-j.com/article/S1341-321X(24)00147-8/abstract

■研究資金
 本研究は、以下の支援を受けて実施しました。
・日本学術振興会 科学研究費(JP17K11183, JP20K18117)
・公益社団法人日本化学療法学会 上原感染症・化学療法研究奨励賞

<詳しい研究内容について>
繰り返す膀胱炎の原因は膣に定着した大腸菌が原因~腟をターゲットとした新規予防法の重要性~


<お問い合わせ>
岡山大学病院泌尿器科 助教 定平卓也
(電話番号)086-235-7287
(FAX)086-231-3986

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