国立大学法人 岡山大学

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わが国の研究力の基盤を支える液体ヘリウムの利用促進・安定供給に向けて11大学・高専等と意見交換を実施

2024年08月26日

 本学は、研究活動の必需品である液体ヘリウムの利用促進と安定供給に向けて、7大学、2高専、1研究機関と6~7月にかけて意見交換を実施しました。
 液体ヘリウムは国内生産しておらず、すべて輸入に頼っていますが、コロナ禍や世界的な紛争等のさまざまな要因によって国内供給が不足しており、かつ購入価格が年々高騰しており、大学・研究機関では入手困難となっています。これは2019年にわが国の6学会、2研究機関連絡会と39機関が共同で出したヘリウム危機に関する声明「ヘリウムリサイクル社会を目指して」においても言及しています。
 本学はヘリウム液化装置を所有しており、学内利用者に液体ヘリウムを供給し、発生したヘリウムガスを回収して再液化するシステムを構築しています。液体ヘリウムを使用する核磁気共鳴(NMR)装置などの研究設備を運用する際に排出されるヘリウムガスを、学内配管を通じて自然生命科学研究支援センター極低温室で回収し、再び液体ヘリウムへと液化し貯留・供給を行うことで、学内における液体ヘリウムのリサイクルをしています。ヘリウム液化装置は極めて高額であり、また設備運用にコストと高度な技術人材等が必要であるため、どの大学・研究機関でも簡単に整備することは容易ではありません。地域の中核大学、そして研究大学である本学が、学内のみで閉じた利用ではなく、近隣の大学、高専、研究機関、企業等に液体ヘリウムを供給できれば、液体ヘリウムを使った研究・開発の裾野を大いに拡げることにつながり、ひいてはわが国の研究力向上・イノベーション創出等につながります。そこで今回、ヘリウム液化装置を所有する大学や、液体ヘリウムを使用する研究設備を所有する大学等と意見交換を実施しました。
 このうち、他機関への液体ヘリウムの供給で先行する大阪大学では、大阪大学と奈良工業高等専門学校(以下、奈良高専)の間で、ヘリウム供給の体制が構築されており、奈良高専のNMR装置で使用したヘリウムガスを大阪大学が回収、液化精製をおこない、再び奈良高専へ液体ヘリウムを供給しています。
 7月30日には、本学研究・イノベーション共創機構機器共用推進本部の畑中耕治本部長と、研究・イノベーション共創管理統括部の研究協力課職員が、大阪大学教職員とともに奈良高専を訪問。奈良高専で排出・回収したヘリウムガスを現地で圧縮する作業の見学や意見交換を実施。ヘリウムガスの圧縮作業では、室内にためてあるヘリウムガスをトラックに積載している圧縮機につなぎ、圧縮したヘリウムガスをガスボンベへ移す作業を見学しました。
 さらにこれに先立ち、6月13日には大阪大学コアファシリティ機構にも訪問し、同機構共創利用支援部門、低温科学支援部門との意見交換や、大阪大学のヘリウム液化装置も見学しました。
 7月11日には、畑中本部長と松本尊道副本部長、友定良太事務職員が、東京大学物性研究所(以下、物性研)を訪問。物性研ではヘリウムガスの再液化事業を実施しており、意見交換や施設見学を行いました。
 これらの複数の大学・研究機関との意見交換や視察において得られた情報をもとに、本学の運用の強化促進と地域のハブとしての供給を目指します。特に本学は、昨年12月22日に文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」(実施主体:日本学術振興会)に採択されており、本事業で推進している取り組みの一つに「イノベーション創出の知と技のメッカとなる」ことを掲げ、研究力強化のハブとなる取り組みを推進しています。近隣大学、高専、研究機関、企業等に液体ヘリウムをより多くの実験に利用促進することで、「知と技のメッカとなる」地域中核・特色ある研究大学:岡山大学を目指します。地域と地球の未来を共創し、社会変革を実現させるJ-PEAKS採択大学である本学の挑戦に、どうぞご期待ください。


〇那須保友学長のコメント
 液化ヘリウムの利用促進・安定供給の取り組みは、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)においても「地域の中核となる研究大学」という点で極めて重要なものと言えます。さらにわが国に資源がなく、100%輸入に依存している点は経済安全保障の観点からも、その取り組みは極めて重要だと考えています。
 私たちは「岡山大学の研究基盤の強化」という近視眼的な判断ではなく、広くわが国の科学技術・イノベーションの強化促進をも見据え、まずは研究ファーストの研究大学としてできることを素早く、かつ着実に進めていきます。また、この取り組みは本学だけでは成し得ないものでもあります。どうぞ関係機関の皆さまのご支援、協働のほど、よろしくお願い申し上げます。


【本件問い合わせ先】
研究・イノベーション共創機構 機器共用推進本部
TEL:086-251-8486
E-mail:corefacility◎adm.okayama-u.ac.jp
     ※@を◎に置き換えています。
機器共用推進本部HP

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